固体物性学（2024年度）

近藤高志 tkondo@castle.t.u-tokyo.ac.jp

Updated: 2024/3/11

講義の目標

固体の物理的性質（固体物性）を扱う固体物理学の基礎を学ぶ。 結晶固体の構造と固体中の結合の知識を出発点として，量子力学と統計力学をツールとして用いながら，固体の熱的性質と電気的性質の基礎を理解することを目標とする。なお，この講義の内容をきちんと理解するためには材料量子力学と材料統計力学の内容の理解が不可欠である。必ずこれらの科目を履修した上で本講義に臨むこと。また，無機材料化学と材料結晶学も事前に履修していることが望ましいが，必要な部分については本講義でも簡単に復習する予定である。

教科書・参考書

この講義での教科書は以下のものを指定する。

• 「初歩から学ぶ固体物理学」矢口裕之著（講談社）
  2017年に出版された比較的新しい固体物理学の教科書。 非常にコンパクトだが，必要最低限の基礎事項を丁寧に説明した良い教科書である。数多く掲載されているイラストや欄外の注（補足説明）もよくできていて，理解の助けになる。 量子力学と統計力学の基礎の復習にもぞれぞれ1章ずつが割かれており，非物理系の学生にはありがたい。材料系，化学系，電気系，機械系などの学生が学部レベルで固体物理を初めて勉強する際には，これが標準的教科書だと思う。 よく売れているので頻繁に刷が改まり，ミスも減っている。

基本的にはこの教科書に沿って講義を進める予定である。

本講義に関する参考書として，以下のものを挙げておく。

• 「固体物理学 原書第４版 物質科学の基礎」イバッハ・リュート著（丸善出版）
  固体物理学（凝縮系物理学）の教科書は多数あるが，本書はその中でも比較的コンパク トな教科書の一つ。材料系の学部レベルで必要な範囲を一通りカバーし，かつ不必要に難しくない，という 点で好感が持てる。理論と実験，基礎と応用がほどよいバランスで考慮されている。章末に挿入されている問題とパネル（多少アドバンストな内容に関する長めの囲み記事） も有用。
• 「固体物理学入門 第8版」キッテル著（丸善）
  もっとも有名な固体物理の教科書。 私も学生時代には，この教科書で勉強した。 固体物理学とその関連分野を専門とする場合には必読。標準的な教科書なので一読を勧めるが，必ずしも理解しやすいとは言い難い（と個人的 には思う）。

講義のスケジュール

4月05日（金）	イントロダクション 結晶の周期性と3次元結晶格子
4月09日（火）	結晶構造，逆格子(1)---逆空間とはなにか
4月16日（火）	逆格子(2)---ブリユアンゾーン，結晶によるX線回折
4月19日（金）	固体における結合 （第1回小テスト）
4月23日（火）	格子振動とフォノン(1)---1次元結晶の格子振動，分散関係，音響・光学モード
4月26日（金）	格子振動とフォノン(2)---3次元結晶の格子振動，縦・横モード，格子振動の量子化
4月30日（火）	固体の熱的性質---格子比熱，熱伝導 （第2回小テスト）
5月10日（金）	自由電子論---自由電子モデル，状態密度，電子比熱
5月14日（火）	バンド理論(1)---ブロッホの定理，空格子近似
5月15日（水）	バンド理論(2)---ほとんど自由な電子モデル，強束縛近似
5月21日（火）	固体の電気伝導(1)---有効質量，電子と正孔，移動度 （第3回小テスト）
5月24日（金）	固体の電気伝導(2)---金属の電気伝導，ホール効果，自由電子による熱伝導
5月28日（火）	期末試験（予定）

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