情報・ナノマテリアル工学II （2008年度）

近藤高志 tkondo@castle.t.u-tokyo.ac.jp

Updated: 2008/07/14
2010/05/24追記

講義の概要

超高速大容量データ通信の根幹をなす光ファイバ通信技術，大容量情報記録に不可欠な光ディスクなどのテクノロジーを支える光デバイスの基礎を学ぶ。この講義では，光の伝搬やそれを制御する導波路などの基本を習得した上で，光ファイバや発光ダイオード，半導体レーザに代表される基本的な各種光デバイスの原理を理解し，それらが実際のシステムの中でどのように利用されているかを学ぶ。また，代表的な光デバイス材料である化合物半導体の特徴とそれを利用した材料設計・デバイス設計の基礎と，量子効果を用いた高機能化の実際も理解する。マテリアル工学科3年冬学期のマテリアル光物性学の内容と同程度の知識を前提とする。

参考書

この講義では教科書は指定しない。配布する講義ノートで可能なかぎりカバーする予定。光デバイス関連の教科書は多数出版されているが，参考書としては以下のものを推奨する。

• 「Fundamentals of Photonics, Second Edition」 B.E.A. Saleh, M.C. Teich著（Wiley Interscience）
  光学の基礎から各種光デバイスの実際まで，広い範囲をカバーした大部（ほぼ1200ページ！）の教科書。学部上級から大学院初級程度のレベルで，最も標準的な教科書といえる。少々高価だが，どれか1冊ということならばこれを推薦する。
• 「光エレクトロニクス（基礎編・応用編）」 ヤリーブ著（丸善）
  大御所A. Yarivの大部の教科書。光エレクトロニクス分野の最も標準的な教科書と言ってよい。ただし，改訂に改訂を重ねた結果，いろいろな記述間の不整合が目立つようになってしまった。こうした矛盾，間違いなどに注意して批判的に読むと大変勉強になる。それでも，光技術で将来身を立てていこうと考えるならば，現時点では最高の教科書である。大学院上級レベル。この翻訳書は原書第5版(Optical Electronics in Modern Communications, 5th edition)に基づいたものだが，既に第6版(Photonics: Optical Electronics in Modern Communications, 6th edition, by Amnon Yariv and Pochi Yeh, Oxford University Press)が出版されているので，むしろこの原書のほうをお薦めする。
• 「半導体レーザ」 伊藤良一・中村道治共編（培風館）
  半導体レーザを実用デバイスにするのに大きな貢献をした研究者による教科書。半導体レーザに関する教科書はいくつも刊行されているが，この教科書は最もバランスが取れていて，今でも最もお薦めできる。
• 「高校数学でわかる半導体の原理」 竹内淳著（講談社 Blue Backs）
  Blue Backsを侮ってはいけない。大変読みやすいので，一読することをお勧めする。
• 「Nonlinear Optics, Second Edition」 R.W. Boyd著 (Academic Press)
  非線形光学の日本語の教科書は残念ながら推薦できるものがない。この英文の教科書は，非線形光学のものとしては現在おそらく世界で最も売れているものである。バランスの取れた標準的な教科書といえるが，SI単位系でなくcgs単位系で書かれているのが残念。（その後出版された第3版はSI単位系になった。）

講義のスケジュール

4月 7日	イントロダクション 光技術と光産業
4月14日	ガウシアンビームの伝搬とその集光
4月21日	パルス光の伝搬
5月12日	光導波路の基礎
5月19日	光導波路への光結合，アレイ導波路型回折格子(AWG)，光ファイバ
5月26日	半導体における光過程と光デバイス
6月 2日	半導体受光素子と発光ダイオード
6月 9日	レーザの基礎
6月16日	半導体レーザの基礎
6月23日	化合物半導体のバンドギャップエンジニアリングと半導体レーザの開発
6月30日	高機能半導体レーザ
7月 7日	非線形光学の基礎
7月14日	非線形光学デバイス

　

講義ノート

講義ノートをPDF形式で公開します。講義時に配布したものと原則的に同じものですが，講義を進めるうちに不適切になった部分や間違いなどなどは訂正してあります。　-> 講義ノート(538 KB)

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